ふと思い出すことあるよ、昔の男のこと・・・
ええい、もう恋なんかするもんかと心に決めていたのに
――秋風が寒く吹く夜だけは、アイツのことを思い出す
よしゑやし
恋ひじとすれど
秋風の
寒く吹く夜(よ)は
君をしぞ思ふ
(作者未詳 巻十の二三〇一)
>>解説
「よしゑやし」は、「ええい、もう」と訳したが、捨て鉢な気持ちを表現する感動詞。恋などするまいと思っていたのに、ふと過去の男を思い出している自分に気づいたのである。
ということは、女は過去に痛い目にあっているのだろう。だからこそ、恋はしないと決めていたのである。しかし、そういう彼女も秋風が吹く夜だけは、昔の男のことを思い出すのであった。 |