もうこりごり、もうこりごり
いまさら
もう恋なんかするもんかと
わたし思っているのに・・・
いったいどこのどいつの恋だい
つかみかかってきやがるのは!
恋は今は
あらじ と我れは思へるを
いづくの恋ぞ
つかみかかれる
(広河女王 巻四の六九五)
>>解説
もう恋などしないと思っていたのに、恋に陥りそうな女の歌。「いづくの恋ぞ つかみかかれる」は、こちらは望まないのに、襲われたということである。恋がつかみかかってくるというのは、大げさな言い方だが、突然むなぐらにつかみかかる暴漢のように恋を歌うのは・・・おもしろい。言い得て、妙というほかはない。才を感じさせる異色の女歌。 |