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言葉は心を伝える道具、О先生との出会い

先日、久しぶりに、大学時代に英語を習ったО先生にあった。先生の英語の授業は変わっていて、下を向いていると、顔を上げて、僕の目をしっかり見て話を聞くように・・・と何度も注意を受けた。だから、ノートが取れない。しかも、その話というのは、ほとんどがご自分の翻訳談義で、お世辞にも英語力が向上するというような授業ではない(ちなみに、О先生は日本におけるシェークスピアの第一人者で、某有名女優との・・親密な交際でも有名なセンセイである)。

第一、先生の授業で英語のノートを取った記憶が無い。しかし、英語への興味が、無限に広がる授業であった。いや、授業というより、あれは座談というべきか?

 「みんな外国でホームパーティーに招かれたら、料理がうまいと誉めるのが礼儀だ!」とО先生。するとまじめな女子学生が、どういう構文で、この肉が美味しいということを、誉めればいいのですか、と質問する。すると、先生の答えはこうだ。そういうことを考えるからみんな英語ができないのだよ。美味しかったら、美味しそうに食べて、そのお皿を左手で持って、相手の目を見て、右手の親指を立てて、ただ一言うれしそうに叫べばいいんだ、「Goo!」とね。相手がいろいろと聞いてきても、「Goo!」と言えばいい。だって、必要なのは、私はこのパーティーを楽しんでいます、ということを伝えることなんだから。というわけで、翌週は、その先生の家でホームパーティーということになったのだが、このホームパーティーには、多くの外国人が招かれていた。だから、受講生一同がこの一語だけを叫んだのはいうまでもない。でも、それをきっかけにして、みんなブロークンな英語を話していたように思う。

と、こんな具合だ。ためにО先生から学んだ英語は、「Goo!」だけである。しかし、О先生と出会うことで、もっと大切なことを学んだような気がする。今となってみれば・・・もっと大切なことを。

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